ブレッサンの会社です。

...地球と名前の幸せな結婚...。

ブレッサンの会社です。 

夜、過去に向かって続く荷馬車の轍跡が古代ローマの街道をひた走り、やがてローマ帝国最東の境界 に到達します。ファッラ・ディソンゾ(ゴリツィアの州)・・・伝説に彩られた地、人々の労働が刻まれ た地、そこでは時は流れを止め、ブドウの緑色の葉がゴツゴツした岩肌と鮮やかな対比をみせていま す。

ブドウ畑の樹一本一本、花の一つ一つに、秘められた歴史があります。わずかなブドウの樹は、驚く べきことに現在まで生き抜き、つるを埃だらけの潅木に絡ませたり、半ば崩れかけた廃墟の壁の片隅 にその身を食い込ませたりしています。この地を開拓する者たちは辺りに満ちた歴史的雰囲気を深く 吸い込み、類稀な自然環境と詩情を感じ取ります。人間と土地との出会いを語る歴史、ブレッサン・ ファミリーが波に飲み込まれることなく生き抜いてきた、連綿と続く歴史の頁が今、開かれようとし ています。

一族の歴史は、最も大規模なブドウの植え付け風景から展開していきます。緑色に輝くブドウの葉の 波に覆われたコッリオ丘陵のなだらかな曲線、それはイソンゾ川へゆったりと下っていき、土地の北 側はアルプス山脈に守られ、南側は暖かな海風が吹き寄せるアドリア海へと開けています。この地で は特殊な自然の要素(地理、地質、気候)が入り混じり、ブドウ栽培に最適な独特の“テロワール”を形 成しています。そこに、ブレッサンのブドウ園が誕生したのです。 人は栽培に最も適した土地を選別することを常に学んできました。そしてブレッサン・ファミリーが 独占所有する畑もいくつかの区画に分かれています。

畑の面積はおよそ20 ヘクタールです。

数世紀にわたる経験がもたらす知恵が“上質なワインは、セラーではなく畑でつくられる。”ということ を我々に教えてくれます。(世間一般では、ワインはセラーでつくられる、と長い間信じられてきまし た。)ブドウ品種や土壌の質などにより、最良と思われるブドウを選び抜いて植えつけることにも、も ちろんかなりの注意が払われます。土地の財産である地元ブドウの自然な遺伝子の選別、保存に関し て、さらなる品質改良を進めるには、ブドウ畑に植えられる樹の選択が大きく作用するのです。

ブドウの樹は、理想的な距離と向きで、整然と列をなして植えられています。“最高レベルのワインの 生産のみを常に目指す”という哲学に基づき、生産量は極めて低く抑えられ、特別に品質の高いブドウ のみを収穫できるようデザインされているのです。

さらに特筆すべきことは、我々の畑はおよそ 5000 本/ha という密植率を誇っています。この数字は不 断の改良を保証するため厳しく設定された栽培方針の、明確な裏づけです。

この生産体系においては、冬場の剪定が重要な基本となります。常にシングル・ギョイヨ式を採用し ているので、1 本の樹に4~5 つの芽がついた1 本の枝しか残さず、1 本あたりの収穫量が0.8~1kg になるようにします。 その結果、不要な過剰生産の問題を解決できるのです。
偉大なワインは厳選されたブドウからつくられる、という概念を再び思い起こしてみれば、我々のよ うに、“自然の摂理に従い、醸造過程に一切手を加えず、もともとブドウに付着している天然酵母の働 きにすべて任せる”という信念の醸造方法を決して無視できなくなります。人の手による操作や添加を 一切排除した、ワインに自然に備わった力を活かす、自然発酵という方法です。我々は、過去300 回 にのぼる収穫の体験から、「偉大なワイン」とは独特の産物~自然の進化における特別な申し子であり、 ほんの小さな、意味がないとも思われるようなささいな過程をも疎かにせず、昔からの製法を守るこ とにより生まれるものである、という確信を抱いているのです。

従って、ワインメーカーとしての我々の役割とは、ワインの変化過程を辛抱強く見守り、“人の手を加 えることを極力控えること”に尽きるといえます。モザイクを貼り合わせるように、来る日も来る日も 新しいタイルが加えられ、最後にようやく全体像が見えてくるのです。高い技術と確かな経験を持つ、 先を見通す力のあるワイン醸造家が、熟成を見守り、ワインの仕上げを施し、樽熟成の期間を決定し ます。そしてワインは魅惑の味わいの瞬間を迎えるのです。 ブレッサンのワインを注意深く味わった人なら誰でも、ブレッサン・ファミリーの歩んだ歴史は複雑 であり、イマジネーションが結集して価値あるものを生み出していく情熱の物語であることを感じ取 ってくださるはずです。3世紀に渡る歴史が父から子へと秘伝の方法となり過去から現在へと受け継 がれています。ファミリーの歴史は今なお完結していないからです。 頂点を極めたと満足し、ビジネスの成功こそが到達点だというワインメーカーもいます。しかし一方 で、決して満足しない者たちもいるのです。ここで問題になるのは金銭ではなく、ワインの品質です。

最近の醸造業界のプレスにおいては、恐らくほんの2~3 ヶ月前に収穫されたと思われる早飲みタイプ のワインばかりをもてはやし、単に“飲める”というレベルのものをあたかも素晴らしい商品のように書 き立てる傾向がみられます。しかし、ワインは人間と同じようなもので、成熟して大人になるには一 定の年月が必要であり、早熟タイプのものであっても最短で3年は必要なのです。

現代のワインメー カーの関心事は、最小限のコストで最大の利益を上げることに尽きるようです。しかしその実現のた めに、すべてを破壊してしまう技術が開発され続けているのです。

もはや誰も良いワインの作り方を教えてはくれません。単に、ワイン産業にとって機能的な技術の適 用方法を示してくれるだけのことです。

しかし現代においても、ブレッサン・ファミリーはワインというものを、“昔ながらの栽培醸造科学を 熟知し、一昔前の技術と結合することができるマエストロのみが造り出すことのできる、繊細な伝統 の産物”とみなしており、全てを無表情に均一化する現代化を断固拒否し、非常に長い伝統を重んじたワイン造りを続けています。